在宅介護
在宅介護 現状の問題解決には家族の覚悟・ゆとり・工夫が必須
在宅介護において要介護者は、家族そしてホームヘルパーなど外部の力を借りながら、長い間住み慣れた自宅で介護生活を営むことになります。
在宅介護は多くの場合、高齢の親がある日突然に病気や事故で倒れ入院したことをきっかけに、前触れもなく唐突にはじまります。
「入院先の病院にいられるのはせいぜい3ヶ月まで。医師によれば、退院後は以前のように自立した生活は難しいとのこと。
どうやらついに介護が必要になりそうだ。急いで皆に連絡して、今後の相談をしなきゃ、介護保険の申請やヘルパーさんの手配なんかも、これからしなくてはならないし。
いよいよ介護とリハビリが、一日の生活の中心になりそうだ・・・」といった心象風景が、その典型的なイメージでしょうか。
今日の在宅介護は、介護の担い手となる「家族」の人数が、昔と違って圧倒的に少ないところにその特徴があります。
それが意味するのは、「世話をする役割を担った家族が何もかも行わなくてはならない、いざという時の代わりが誰もいない」という構図に、介護にかかわる家庭が容易に追い込まれやすいという現実です。
地方で暮らしていた高齢の親が二人とも介護が必要になったが、近隣の介護施設が満杯で入所できず、やむなく子供が東京の会社を退職し在宅介護に専念せざるを得なくなった・・・といった話などは、その典型例です。
ある調査によると、介護を理由に仕事を辞めた経験のある男性は13%、女性は27%に達したとのことです。
高齢者介護は加齢による本人の身体機能のおとろえに応じて続けられる、不可逆的で終わりの見えない、そして非常に達成感を得にくい活動です。
同じように高齢となった夫や妻ただ一人、あるいは子供一人だけで介護を行おうとするのは、介護者の時間とエネルギーを「介護」というただ一つの目的にすべてそそぎ込み、「介護者の自立」を「要介護者の人生」と交換するようなものかもしれません。
そして介護が必要になってしまった当の本人はというと、自身の自立した生活が失われたことに大きなショックを受け、喪失感と将来への不安とで頭がいっぱいになり、介護者へ感謝の意を示す気持ちの余裕などとても持てないことが多いものです。
介護をきっかけに本人がうつ状態になってしまい、周囲のことや新しいことにまったく関心を示さなくなるケースなども少なくありません。
高齢者のうつ病~家族の対応と気づき・治療の注意点
在宅介護を行う介護者は、介護生活に自分の人生をそそぎ込みながらも、代わりに得られるものはほとんど無いのが現実です。
そして一歩間違えると、介護者自身が体調を大きく崩したり、あるいは精神に変調をきたしかねない危険性がつねに横たわっています。
在宅介護と介護保険のサービス~外部の力を上手に活用
上手な(そしてとても重要な)在宅介護のコツとして、「外部サービスをできるだけ有効に活用する」ことがあげられます。
在宅介護 現状の問題解決には、家族の覚悟・ゆとり・工夫が必須 でも述べたとおり、「身内のことだから、家族だけでなんとかしよう」という発想で高齢者の介護にのぞむと、介護する側の家族の精神と身体を消耗させるだけでなく、最終的には要介護者への介護の質も下げてしまうことになります。
介護保険のサービスは色々ありますが(介護サービス・介護予防サービス 種類とその概要 ご参照)、在宅介護においてもっともよく利用されるサービスは、「訪問系サービス」と「通所系サービス」になります。
介護保険の要介護認定において、「要支援(1・2)」あるいは「要介護(1~5)」のどちらに認定されるかによっても、サービスの内容や利用回数は異なりますが(要介護度の認定引き下げが、介護保険利用者におよぼす影響 ご参照)、大まかに言えば、外部から本人の自宅にやって来てサービスを提供するのが「訪問系サービス」、本人が施設に送迎してもらいそこで一定のサービスを受けて戻ってくるのが「通所系サービス」となります。
「訪問系サービス」には、事業所からホームヘルパー・介護員が派遣される「訪問介護」「訪問入浴介護」、また看護師や理学療法士・管理栄養士らが来て診療の補助や指導を行う「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「居宅療養管理指導」などがあります。
「通所系サービス」には、入浴や食事・皆で行うレクリエーションなどを通じ生活面の心身改善を目的に施設に通う「通所介護(デイサービス)」、専門家の指導にもとづく心身機能の回復訓練を目的とした「通所リハビリテーション(デイケア)」などがあります。
これらはケアプランにもとづき利用回数や一日の滞在時間などが決められていますが、介護者が体調を崩すなどして家庭での介護が一時的に難しくなった場合には、介護施設に一定期間(最大一ヶ月30日)入所できる「短期入所(ショートステイ)」という通所系サービスもあります。
デイサービス・デイケア・ショートステイ~概要と現状
また通所系サービスには、特に認知症の方を対象として食事・入浴・レクリエーションなどを提供する「認知症対応型通所介護」もあります。
在宅介護、「事前の準備」こそが将来の介護負担を大きく減らす
それまで元気にしていた親や配偶者が突然ケガや病気で倒れ、病院に入院してからはじめて介護を考える家庭が少なくありません。
その後なんとか病状が安定してきた段階で、次の転院先に移るか、あるいは自宅に戻っての在宅介護を始めるかを考えていくことになります(ちなみに転院する場合、病院に設置された医療相談室で、ソーシャルワーカーらのアドバイスを受けながら手続をしていくのが一般的です)。
(退院後、在宅介護に移行するときの注意点 もあわせてご参照ください。)
しかし一口に「転院」と言っても、すでに報道などでご存じのように、現状はなかなか大変なものがあります。
現在、一般病院での平均在院日数は19.2日(2006年度)ですし、リハビリ専門の病院(回復期リハビリテーション病院)の最大入院日数も、180日が限度となっています。
最初の病院から運よく他の一般病院に転院できたとして、その病院にいられるのもせいぜい3ヶ月程度。
いわゆる「社会的入院」(治療の必要が乏しいにもかかわらず入院を続ける状態)が国の医療費を圧迫し続けていることを背景として、医療の必要性が低いと判断される患者の診療報酬(入院基本料)は低く設定されています。
そのため、医療機関にとっては、医療の必要性が乏しい患者をいつまでも入院させていては、経営上の死活問題になりかねないのです。
病気の種類や手術の有無、そして入院が差額ベッド代のかかる個室かあるいは相部屋かなどによっても変わってきますが、一ヶ月まるまる入院した場合の費用(自己負担額)は、少なくとも20~30万円程度かかるものと考えたほうがいいでしょう。
国の高額療養費制度を使えるならば使うべきでしょうが、いずれにしても、一ヶ月で数十万円が確実に飛んでいく入院費が本人や家族にとって経済的に重い負担であることは確かです。
在宅介護にのぞむ気持ちを楽にする、ちょっとした気づき(1)
在宅介護にあたり家族として知っておくべき知識や注意すべきことなどは、それこそ山のようにあります。
しかし、介護する側もされる側もおなじ生身の人間同士、いくら事前に周到な準備をしたところで、そうそう思い描いていたとおりに事が運ぶはずもありません。
また長年一緒に過ごした家族として、要介護者のことを誰よりもわかっていたはずなのに、予想だにしない事態や思いもよらぬ本人の行動に遭遇して、すっかり今後の介護に自信を失ってしまったり、あるいは精神的に打ちのめされてしまうことなども、決して珍しくないのです。
本人の尊厳を大切にしつつ、介護に追われる自分自身のプライドをも守ろうとする日々の連続は、まじめに取り組むほど大変なエネルギーを消耗することになります。
ここでは、ひとつとして同じかたちのない「在宅介護の風景」においていくつか心に留めておきたい、いわば「骨太の方針」を提案しておきます。
(1)在宅介護だからといって、すべて身内で抱え込もう・解決しようとしない。外部に何人かの「良きパートナー(協力者)」を持つようにすること。
一緒に暮らしている場合はもちろんのこと、遠距離介護ならばなおさら、外部者の力を上手に利用できるような協力体制をつくることが必須です。
ケアマネジャー・ホームヘルパー・地域包括支援センターの担当者らとの連携を密にするのはもちろんのこと、日頃の介護する側の苦労やちょっとした悩みをグチとしてこぼしあったりできるような「介護者同士の情報交換の場」があると、精神的な負担がずいぶんと和らぐものです。
お住まいの地域に同じ悩みを持った「介護者の家族の会」的なものや、あるいはNPO等が主催する支援グループなどがないかを探して、早い段階から積極的に参加してみるとよいでしょう。
在宅介護にのぞむ気持ちを楽にする、ちょっとした気づき(2)
在宅介護にのぞむ気持ちを楽にする、ちょっとした気づき(1) からの続きです。
(4)日々の在宅介護が少しでも楽になるよう、要介護者の自宅の生活環境の整備・改善をはかっていくこと。
こちらについては、高齢者の住まいの見直し~在宅介護がしやすい居住環境をつくる もご参照ください。
ただし在宅介護が始まる以前に、先々よかれと思って自宅のバリアフリー化の改築などをあまり先行しすぎると、いざ実際の介護生活がスタートしたときにまったく役にたたなかったり、かえって逆効果になることもあるので、そこは気をつけたいものです。
たとえば階段の手すりを左側につけてみたが、要介護者の左半身のマヒのために手すりを右側にも追加することになった。
階段の左右に手すりを設けるスペースが無いために、せっかくつけた左側の手すりは外すハメになった・・・など、予期せぬ事情のためにそのときでなければとれないような対応も、たくさん出てくるはずです。
このような意味で、介護のための環境整備は「走りながら考える」ような面が確かにありますが、しかし細かい改善点を少しずつつけ加えていくことで、介護者も要介護者も、日々の動作・生活面がぐっとスムーズになるものです。
改築・改修において無駄な出費を避けるためにも、日頃から生活の不都合や不便な点を思いついたときにノートにメモしておくと、後でいざ介護保険を利用して住宅改修を・・・となったときはスムーズに動きやすいでしょう。
(5)日頃から、将来の状況変化に備えての情報収集に努めたい。ただし情報収集のための時間は、かけすぎないようにすること。
国が「施設から在宅へ」と懸命に政策的転換を促しているにもかかわらず、在宅介護を続けたまま住み慣れた自宅で一生を終える高齢者はいまだに少数派です。
入院後そのまま病院で亡くなったり、あるいは施設介護に移行しそのまま施設で看取られる方が、まだ大半を占めているのが現実です。
したがって在宅介護は、現実にどうなるかはともかく、将来の施設介護への移行をつねに考えながら行う必要があります。
そのため、よい介護施設を手持ちの選択肢から選ぶため、さまざまな情報収集が必要なのですが、介護を続けながらこれを行うのはなかなか大変なことです。
先に述べたような外部者の力や情報網などを利用しつつ、インターネット検索やメールによる情報交換も活用して、空き時間を少しでも効率的に使うよう工夫したいものです。
そして貴重な時間の余裕ができたときは、際限なく介護のことを考え続けるよりも、思い切って介護者自身の休息や気分転換に充てるようにしましょう。
家族の在宅介護上の負担と、その減らし方
1950年代までは日本人の8割が自宅で最期を迎えていたのに、今日では病院で亡くなる方が8割と、完全に逆転した状況になっています。
高齢社会白書(平成24年版)によると、『自宅で最期まで生活することが困難な理由』として「介護してくれる家族に負担がかかる」「症状が急変したときの対応に不安がある」の2つの回答が、突出して多かったとのことです。
また『自宅での療養を可能にする条件』として回答が最も多かったのは、「在宅介護・在宅医療サービスの充実」「家族の協力」「緊急時の連絡体制の整備」でした。
平成24年版高齢社会白書(概要版)(内閣府)
これを見ると「困難な理由」と「可能にする条件」が、ほぼ表裏の関係になっていることがわかります。
言い換えるなら、「困難な理由」をできるだけ排除すべく工夫することが、家族の在宅介護の負担を和らげることにつながるのではないでしょうか。
まずは「緊急時の連絡体制」を、きちんと作っておきましょう。
緊急通報システムはすでに全国で9割以上の自治体に普及しており、「緊急通報装置」を低額ないし無料で貸与してくれます。
数に限りがあるため申込制になりますが、市町村の福祉担当課や地域包括支援センターに相談してみましょう。
緊急通報装置の貸与 (千葉県佐倉市)
有料ではありますが、民間企業の提供する緊急通報サービスも、年々洗練されてきています。
ご自宅用・高齢者向け緊急通報システム (押すだけコール)(株式会社マザアス)
セコム・マイドクタープラス(高齢者見守りサービス)(セコム株式会社)
在宅介護を続けていけるかどうかの境目は、自分でどうにか「食事をとれるか」「トイレに行けるか」にあると言われます。
この2つが可能なら、周辺環境をできるだけ整え、本人の負担を軽くする視点から考えていきます。
たとえば専用の食事支援用具やサイドテーブルなどを揃えたり、あるいはトイレに行くまでの動線の整備・トイレの手すりの設置など、介護保険の福祉用具販売・レンタルを利用して選んでいきます。
一般的にはケアマネジャーを通じて、福祉用具専門相談員に相談することになるでしょう。
福祉用具(4)〔食事支援・自立支援用具〕。
福祉用具(6)〔腰掛便座・特殊尿器〕。
個人差はあるものの、要介護2くらいまでなら、介助を得ながら歩行が可能なケースも多くなります。
「老年症候群(生活不活発病)」を防ぐためにも、事前にやり方を医師とも相談した上で、毎日少しでもベッドから出て室内を歩く練習や、歩行杖や車いすを使った外出を工夫します。
時に友人と外で集まっての会食などが企画できるなら、相乗効果も得られてベターでしょう。
介護技術の向上や居住環境の整備が、在宅介護の全てじゃない
在宅介護においては、体調が悪くなった親の食事・入浴・排泄などの介護体制をどう整えるか、あるいは介護に最適なバリアフリーの居住環境をいくらかけて増築するかといった物理面・ハード面に、家族の関心はどうしても傾きがちになります。
そもそも最近では、家族と同居しているからといって、在宅での介護状態が実現しているとも言い切れません。
高齢の親がずっと家にこもりがちなのに対し、子供が長時間労働で帰宅が遅く、同居していながらお互いの生活サイクルが完全にずれている場合などは要注意です。
共働きの子供夫婦が早朝から深夜まで仕事で家を空け、本人は一日の大半を自宅で一人きりで過ごすことが続いたために、体調や精神面を悪化させたケースなどは、現実に少なくありません。
それ以外にも、同居する嫁姑の関係が悪化し、嫁が孫を接触させないようになったり、行事のときに親を一人残したまま子供の家族だけで外出するなど、デリケートな心理面での配慮を怠ったことによって、同居していながら親が疎外感・孤独感を感じるようになった事例もあります。
退院後、在宅介護に移行するときの注意点
在宅介護の準備は、本人が医療機関に入院しているうちにスタートしたいところですが、身内だけで、あるいは自分一人ですべて行おうとすると、介護生活に入る前に様々な無理が出てきかねません。
ここは病院の相談窓口や「地域包括支援センター」といった外部の惑口を、できるだけ積極的に活用したいものです。
在宅介護は四六時中同じ身内と顔をつきあわせているため、介護される側にとって安心感につながるメリットがある一方、コミュニケーション上の変化に乏しくなり、日々の生活に閉息感を感じがちになるといったデメリットもあります。
外部の介護分野のエキスパートに接触することで、本人にとっても新鮮さやある種の緊張感が生まれてきますし、日常生活に変化がつくことによる社会性の維持にもつながってきます。
また介護者となる家族にとっても、外部に相談相手がいることで自分たちだけでは気づかない新鮮な視点がもたらされ、精神的なゆとりや安心感も生まれてきます。
「よその人様の手は借りたくない」と家の中に外部者を入れることをかたくなに拒む高齢者も少なくありませんが、24時間の生活すべてを身内だけで完結させてしまうと、本人の感覚や思考力が、長期的にみてどうしてもゆがんできがちです。
これはいわゆる「閉じこもり」や「廃用症候群(生活不活発病)」に繋がるリスクを高めることになります。
在宅介護における動作介助~家族が知っておきたい基本
自宅介護では、ヘルパーに頼むとき以外は家族が本人の動作介助を行うことになりますが、介護ベッドからの寝起き・立ち上がり・着衣・食事・歩行・車椅子・入浴・ベットへの戻りなど、当然ながら一日の生活の中では様々な場面が出てきます。
これらの動作ごと、本人にとって楽で、かつ介護者にとってもスムーズで最小限の負担で済む動作を実現するための、いわば「介助のコツ」が存在します。
一般に歳をとるにつれ、たとえば「体を起こしますよ」と言われて実際に介助を受けるまでの反応や、介護者が行う動作に対する順応速度は遅くなります。
無言で力まかせに本人の体をひっぱったり曲げたりというのはもちろん論外で、まずは介助前に「これからどういう動作をするかを本人に、ゆっくりとはっきりした声できちんと伝える」のが、基本中の基本となります。
その後いきなり動作に移らず、本人の反応を確認してから介助体勢に入るようにします。
特に朝の寝起きで介護ベッドから起き上がるときには、まだ本人の意識が覚醒していないことも多いため、急がせるとふらつきや立ちくらみ・めまいを起こす可能性もあります。
次に、動作ごとに人のカラダにとってもっとも自然で効率的な動き方というものがあるので、そのしくみをあらかじめ理解してそれに沿った動作介助を心がける必要があります。
これは本を読むなど知識として仕入れるだけでなく、まず自分自身で実際の動作を確認する、たとえば椅子から立ち上がるときは自分はどうしているかを、自分の個々の体の部位を意識して主なポイントを頭に入れておくことが、役に立ちます。
たとえば座っている状態から立ち上がるときは、まず前かがみになって頭を倒し、ひざをまっすぐに伸ばしていきながらお尻を浮かせ、重い頭とのバランスをとりながら立ち上がっていく感覚を、自分で座って立つ動作を繰り返すことで実感できると思います。
別の見方をすれば要介護者がベッドから立ち上がる時に転倒するのは、前かがみになったとき頭の重さに腹筋やひざの筋肉が耐えきれなかったり(いわゆる「ひざが折れた」状態)、前に突き出た頭と後ろに引かれたお尻とのバランスを取るのに失敗するためです。
在宅介護のための住宅~生活動線と、要介護者本人の目線から
「在宅介護サービスを受けやすい環境づくり」という観点から住宅プランニングのポイントをまとめた、国土交通省の提案資料をご紹介します。
この資料は「戸建て住宅の新築・建替え」を主に想定していますが、資料内でも言及されているように既存の戸建てやマンション内でも、在宅介護に適した住環境づくりに関心のある方に参考になる点が、多々含まれています。
在宅サービスに対応した住宅を考えるヒント(案) (国土交通省 住宅局)
この国土交通省の提案資料では、
・要介護状態になっても、車椅子や介助者が必要になっても、自宅で住み続けたいと思う高齢者は多い
・したがって「在宅サービスに対応した住宅」の工夫が必要になるが、注意すべきは「高齢者の健康状態やライフステージ」が、時が経つにつれ変化していくこと。
本人の将来的な健康状態の変化に対応するべく、「高齢者が元気なうちから」在宅介護面での工夫を、あらかじめ住宅に組み込んでおくこと。
これらを前提とした「在宅サービスに対応した住宅」のポイントとして:
(1)在宅サービスを受けやすい(外部者が入りやすい・室内から外に出やすい)工夫
(2)本人の身体状況に配慮する工夫
(3)家族間のプライバシーを確保する工夫
の3つの方向から、様々な具体的対策とアイデアが掲載されています。
また配慮すべき視点として、「高齢者本人の家の主人としての誇り」および「地域(住民)との交流」を挙げています。
前者は「在宅介護のための合理性を求め過ぎない」こと、そして「本人がこれまで大切にしてきた生活スタイルを継承することの大切さ」を指摘しています。
後者では、「本人の自宅を、馴染みの地域住民が気軽に訪れやすくする工夫」にも配慮すべきとしています。以上が、この資料の大まかな流れとなっています。
在宅介護のメリット~「施設介護の裏返し」から考える自立心
在宅でご家族の介護をしている中、「施設に入るお金さえあれば、もっとよい介護が実現できるのに…」と内心思っている方も、少なくないことでしょう。
ただし施設介護を望んでいるのはほとんど「介護を行う側」で、介護を受ける当人は、「住み慣れた自宅で、最期まで暮らしたい」と考えているようです。
本人が介護施設に入る意思を見せているケースでは、やはり「家族に迷惑をかけたくない」という思いが、その根底にあります。
内閣府の調査でも、介護してほしい場所は「自宅」が3~4割、最後を迎えたい場所としても「自宅」が5割以上と、共に最も高い回答になっています。
【PDF】高齢化の状況-平成26年版高齢社会白書(内閣府)
ここでは施設介護との比較を交えながら、普段はなかなか気づきにくい「在宅介護のメリット」について考察します。
もちろん前提として、「本人が現在、どのような要介護状態にあるか」によっても、話は大きく変わってきます。
介護する家族の身体的疲労がもっとも強くなるケース、たとえば認知症で徘徊の頻度が高い場合は、近隣に迷惑もかかって一日中見守るのも難しいため、「介護施設への入所」という選択が最優先になるでしょう。
しかし多少のもの忘れはあるものの、身体は割にしっかりしていて、食事を摂ることとトイレに行くことは、不自由ながらなんとか一人でできる。
現在このような状態ならば、あわてて介護施設に入れるのはかえって、本人の心身の衰弱をすすめる恐れもあります。
介護施設では24時間体制の見守りこそあるものの、一日の生活スケジュールが固定されているため、本人の自立心と運動機能の衰えを、結果的に促してしまうおそれがあります。
施設での人間関係がうまくいかなかったり、入居後にケアマネジャーや病院の変更を施設から迫られたりすると、本人が強いストレスにさらされる可能性も出てきます。
施設における見守りも、「いざ緊急事態」となった際、心もとない面があることは否めません。
特に深夜の時間帯などは、担当の介護職員が1~2人のみ、万一の際は担当看護師に電話連絡したり、救急車を呼んで夜間対応の急性期病院へ運ぶだけ…という施設のほうが、現状では多数派でしょう。
それならば在宅でも、「万一の際の通報→かかりつけ医・救急車につなげる、導線のしっかりした見守りシステム」にお金をかけるやり方と、さほど違いがないのではないでしょうか。
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