高齢者の住まいの見直し~在宅介護がし易い居住環境をつくる
高齢者が長年住んできた自宅での在宅介護生活がいよいよ現実になりそうなとき、住み慣れたその家が、身体的機能が衰えてきた本人そして介護する家族にとっても、安全で機能的なつくりになっているかどうか一度チェックしておきたいものです。
たとえば数十年前に建てられた地方の古い一軒家に親が住んでおり、そこがそのまま介護の現場になりそうな場合を想定してみましょう。
「家族による在宅介護」などは建築時において想定すらしていなかったはずで、在来工法による和風家屋のつくりも、畳の寸法が全体設計のベースとなっているはずです。
これまで本人が布団を上げ下げして寝ていた四畳半や六畳間に大きな介護ベッドを入れたうえ、介護者がそこから本人を抱え起こしたり、あるいは車いすに乗せたりといった動作をスムーズに行うことが、現状のままで果たして可能でしょうか。
介護の動作に慣れたホームヘルパーならまだしも、高齢の配偶者や中高年の子供が狭いスペースに四苦八苦しながら行うようでは、毎日のそのような動作の繰り返しだけで、介護者は疲れが積み重なってくたびれ果ててしまうことでしょう。
長年住んでいる間に、もはや使いそうもない置物や家具などが部屋の隅を占領している場合には、それらも片づけなければ、介護する側の動作を大いに邪魔しそうです。
トイレや階段に手すりをつけたり、風呂場に転倒防止のマットを敷くことなどは、誰でも割と気がつきやすいものです。
しかし、たとえば車いすの生活となった場合などに、病院や介護施設までの往復時の車の乗降のしやすさ、あるいは玄関から居室・リビングから寝室にいたる様々な「生活導線」をいかにスムーズなものにするか、さらに介護者が本人と一緒に出入りした場合のスペースの確保が十分か、などの点にはなかなか想像が及ばないため、対応は後手に回りがちです。
加えて、高齢になるにつれてどうしてもすり足で歩きがちになるため、つまづきの原因となる足下のちょっとした段差の解消や、からまったまま床に放置されている電気コードの処理などにおいて、床面のバリアフリー化が必要になります。
高齢者の家庭内事故は一般に想像するよりもずっと件数が多く、なかでも転倒による骨折は全体の2割程度を占めていて、まったく珍しいことではありません。
・病院危害情報からみた高齢者の家庭内事故(国民生活センター)
その他には、日中のほとんどを過ごすはずの室内の換気や湿度・採光や照明さらには冷暖房についても、健康と快適さの両面から考えて整備する必要がありますし、古い住宅の場合、そもそも壁の材質や部屋のリフォームから行う必要があるかもしれません。
介護保険においては、20万円を上限とする「住宅改修費支給」また1年で10万円を上限とする「福祉用具購入費」の補助などが用意されていますので、条件を確認し利用できるものについては、申請してみるとよいでしょう。
・介護保険制度における住宅改修、利用にあたってのポイント
・介護保険に係る、「住宅改修費」の支給について。
・介護用品・機器 「福祉用具購入費」の支給について。
なお介護保険が使えない、あるいは要介護認定が非該当(自立)のときは、お住まいの市区町村で独自に補助制度を設けている場合もありますので、制度の有無や利用条件についてもあらかじめ市役所の介護担当窓口に照会しておきましょう。
高齢者本人が日常生活においてできるだけ自立した生活が送れるよう配慮していくことは、もちろん大切です。
しかし同時に、家族やホームヘルパーなど複数名の介護者が出入りして本人の介護を行いやすい住宅環境を実現することが、スムーズな在宅介護を行うためにきわめて重要であることも、ぜひ覚えておきたいものです。
なお 在宅介護にのぞむ気持ちを楽にする、ちょっとした気づき(2) も、あわせてご覧ください。
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