在宅介護における動作介助~家族が知っておきたい基本


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自宅介護では、ヘルパーに頼むとき以外は家族が本人の動作介助を行うことになりますが、介護ベッドからの寝起き・立ち上がり・着衣・食事・歩行・車椅子・入浴・ベットへの戻りなど、当然ながら一日の生活の中では様々な場面が出てきます。

これらの動作ごと、本人にとって楽で、かつ介護者にとってもスムーズで最小限の負担で済む動作を実現するための、いわば「介助のコツ」が存在します。


一般に歳をとるにつれ、たとえば「体を起こしますよ」と言われて実際に介助を受けるまでの反応や、介護者が行う動作に対する順応速度は遅くなります。


無言で力まかせに本人の体をひっぱったり曲げたりというのはもちろん論外で、まずは介助前に「これからどういう動作をするかを本人に、ゆっくりとはっきりした声できちんと伝える」のが、基本中の基本となります。

その後いきなり動作に移らず、本人の反応を確認してから介助体勢に入るようにします。

特に朝の寝起きで介護ベッドから起き上がるときには、まだ本人の意識が覚醒していないことも多いため、急がせるとふらつきや立ちくらみ・めまいを起こす可能性もあります。


次に、動作ごとに人のカラダにとってもっとも自然で効率的な動き方というものがあるので、そのしくみをあらかじめ理解してそれに沿った動作介助を心がける必要があります。


これは本を読むなど知識として仕入れるだけでなく、まず自分自身で実際の動作を確認する、たとえば椅子から立ち上がるときは自分はどうしているかを、自分の個々の体の部位を意識して主なポイントを頭に入れておくことが、役に立ちます。


たとえば座っている状態から立ち上がるときは、まず前かがみになって頭を倒し、ひざをまっすぐに伸ばしていきながらお尻を浮かせ、重い頭とのバランスをとりながら立ち上がっていく感覚を、自分で座って立つ動作を繰り返すことで実感できると思います。


別の見方をすれば要介護者がベッドから立ち上がる時に転倒するのは、前かがみになったとき頭の重さに腹筋やひざの筋肉が耐えきれなかったり(いわゆる「ひざが折れた」状態)、前に突き出た頭と後ろに引かれたお尻とのバランスを取るのに失敗するためです。


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このように「動作の支点となるポイントがどこにあるか」を理解することにより、たとえば立ち上がり介助のケースでは、

・本人に前かがみになることをはっきり意識してもらうこと
・前かがみになったときに足に力が入りやすいよう、かかとを膝よりも手前に引いてもらう
・立ち上がるときに筋肉の弱さから膝が折れないよう、本人のひざが前にでないよう介護者の足でブロックしながら介助すること

など、さまざまな動作介助のポイントが導かれてきます。


この時、たとえば身体の半身にすでにマヒなどが現れている場合は、マヒのない側をしっかりブロックすることを意識するなど、本人の状態に応じた細かな調整が必要になります。


自分でどうすればよいか判別がつきにくい時には、本人と話せる場合はもちろん本人の思いを聞き、さらに経験豊かなヘルパーさんに尋ねたり、あるいはショートステイで施設に出向いた時に専門家のアドバイスを取り入れるなどを工夫したいものです。


いずれにせよ、たとえば片側にマヒが出ているからといって、日常動作(運動)の回数を減らして負担を減らすべきという結論にはなりません。

マヒの無い方の側の筋肉が衰えて、廃用症候群(生活不活発病)があらわれてくるからです。

本人の運動機能を活かした介護ケアとは ご参照)


最後に、これらの動作が本人および介助者の双方とも行いやすいよう、在宅介護にかかわる室内環境を細やかな目線を持って整えることにも気を配りたいものです。

たとえばベッドから起き上がるときには、ベッドに腰掛けたとき足の底がきちんと全部床につく高さに調整しておくことが必須です。


また立ち上がり介助だけを考えるのでなく、ベッドから車椅子へは座ったままでスムーズな移動ができるようにベッドの高さを調整しておくとか、介助者が起こす時にベッドの柵がぶつかって危ないので柵をすぐに取り外せるようにしておくなど、ほかに展開されるであろう動作もあわせて想定しておく必要があります。


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