本人の運動機能を活かした介護ケアとは


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国が施策として在宅介護・在宅医療を押し進める中で、介護する家族を抱えるひとつひとつの家族に目を向けてみると、在宅での介護・医療に関する基本的な知識やノウハウの普及は、残念ながらまだまだ貧弱な状況です。


たとえば、介助者の都合だけを考えて電動の介護ベッドを購入してみたり、本人をベッドから起こすときや立ち上がりを介助するときに楽なよう力まかせに引っ張ってみたり、食事は本人にいっさいの動作をさせずに介助者がただスプーンを口に運ぶだけ、といったことは、在宅介護の現場においてごく日常的風景なのではないでしょうか。


どうしてもかつて本人が元気だった頃のイメージに引きずられて、「これくらいならきっと我慢できるだろう」「それほど影響はないだろう」と、一つ一つの動作をつい軽く考えてしまいがちです。


しかし、高齢者の平均寿命が伸び超高齢社会が定着した現在であっても、年齢が進むにつれ身体能力は着実に衰え、それに伴う精神面での変化も生じてくることは、厳然たる事実なのです。

研究によれば、一般に高齢者にはまず「歩行能力の衰え」が現れ、次に「排泄」と「食事」の面における障害があらわれるそうです。


たとえば、一般人の平均的な歩行スピードは分速80メートルですが、これが75歳の女性となると分速60メートルに低下します。歳を重ね歩行スピードが遅くなるほどに転倒も起きやすくなり、日常生活の動作に支障が生じやすくなります。

加えて、万一の転倒による骨折で3~4週間程度寝たきりが続いた場合、筋力が5割近く低下するもと言われます。日々の在宅介護において、「高齢期の運動機能の維持・廃用症候群の回避」がいかに大切か、わかりますね。


たとえ一日わずか数分の運動であっても、やっただけの効果は出ると言われます。日々の生活で本人が運動する機会を少しでも持てるように、家族も意識したいものです。


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電動介護ベッドはたしかに(特に介助者にとって)便利ですが、本人が自分で起きあがれるにもかかわらず、電動で起こすことを繰り返していると、起きあがるために必要な筋力や運動機能の退化を招くことになります。

また家のスペースの都合で、幅の狭い電動ベッドを導入してしまうと、それまで打てていた寝返りができなくなって、そのぶんの運動が失われたり、さらには同じ姿勢でいることによる床ずれ(褥瘡)が生じる可能性も高くなります。


導入の必要性と、考えられる問題点を十分に検討してから電動ベッドを選択するのならよいのですが、介助者目線でみた介護のしやすさだけで「食事から排泄までベッドの上で行えば効率的」などと考えてしまうと、代償として本人の運動機能の低下・退廃を招くことになります。


ベッドからの起き上がりや、車椅子の使用に伴う立ち上がりの介助についても、「本人の現在の運動能力を最大限に活かしつつ、それをサポートする」意識を持たないと、ただ介助者がやりやすいよう力まかせに引っ張ったり、体ごと抱き抱えたりするだけになります。

これは要介護者本人が運動をする機会を失わせるだけでなく、下手をすると引っ張ったときの関節の脱臼など、介護事故を招くことにもなりかねません。


また食事の介助については、本当に本人がまったく手も動かせないような、介助者が100%代わりに動作をしてあげなくてはいけない状態なのか、もう一度考えてみる必要がありそうです。

不自由ながらも、「自分の手で(つまりは自分の意思で)食べ物をとっている」という感覚は、とても大切なものです。

食べ物をこぼしたり、食器をひっくり返したりするおそれは確かにありますが、それは介助者が先回りして何もかも代行する理由にはなりません。


介助者がまず成すべきことは、「本人が自力で食事をとるために、手助けできることはもう無いか」を点検することです。

たとえば、弱い握力でも扱える専用スプーンやすべり止めのついた食器に替えたら、食べ物をこぼす心配も少なくなるのではないでしょうか。

本人が食事しやすいように、テーブルや椅子の高さをきちんと調整しているでしょうか。


食事をとることも、立派な「運動のチャンス」です。


「何を食べてもらうか」にばかり気を取られ、「食べる動作を通じた本人の自立性と運動機能の向上」を見落とさないようにしたいものです。


次の記事は「在宅介護における動作介助~家族が知っておきたい基本」です。

ひとつ前の記事は「退院後、在宅介護に移行するときの注意点」です。


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