高齢者のうつ病~家族の対応と気づき・治療の注意点
在宅での介護や高齢者の日々の生活において、家族が注意を払うべき病気のひとつに「うつ病」があります。
一般の皆様へ「うつ病って何?」(JCPTD委員会)
うつ病そのものの患者数は、10代からほぼ全世代に渡ってまんべんなく分布しているものの、実はうつ病の患者数がもっとも多いのが、いわゆる「後期高齢者世代(75歳以上)の女性」なのです。
長年連れ添ってきた配偶者に先立たれ、地域の親しい友人たちも病気がちでめったに会えない、そして櫛の歯がかけるように毎年誰かが亡くなっていく、そして子供たちは都会の会社勤めで年に1~2回しか戻ってこない・・・といった高齢女性の単身世帯は、潜在的にうつ病発症のリスクがかなり高いことに注意が必要です。
女性に限らず、年々新しいことに対しての気力が衰え、身体的機能や感覚が衰えて自宅に引きこもりがちな高齢男性もまた、うつ病になるリスクは決して低くありません。
もちろん、配偶者に先立たれた高齢者が皆うつ病や認知症になるわけではありません。
また認知症にはうつ病ときわめて似た症状を示すものもありますが、うつ病は認知症と異なり、精神療法や薬物療法によって治すことが可能です。
高齢者本人は通常、うつ病に対する知識をほとんど持ち合わせていませんので、家族や周囲の人間が本人の行動にふだんと違った何かを感じたときは、うつ病を(あるいは認知症を)疑い、精神科・神経内科の専門医に相談し、本人に適切な診察を受けさせることも必要です。
自殺既遂者の8~9割にはうつ病を含むなんらかの精神障害があるというデータもありますが、うつ病を原因とする高齢者の自殺も相当数にのぼると考えられています。
本人の症状の変化を見逃し、これを放置することは重大な結果につながる可能性があるため、家族としては予防的に行動していく必要があります。
しかし高齢者のうつ病では精神面よりも身体的症状を訴えることが多く、また高齢になるに従って感情の起伏が乏しくなりがちなこともあり、その変化を見逃しやすいと言われています。
そもそも精神科医の数も全国的に多いと言えず、地方においては高齢者のうつ病の症例経験が乏しい医師も少なくありません。
また、たとえ医師と言えど外部の人間に、自分の心の内をあけすけに語ることのできる高齢者は多くはいませんし、自分より年齢がずっと若い医師に抵抗を感じて通院をいやがったり、治療に不信感を抱いたりすることもあります。
このように、特に地方においては、多くない選択肢の中からなんとか対応していかなくてはなりませんが、それでも専門医への相談や投薬治療など、まず最初の一歩を踏み出すことで、次にすべき対応が見えてくるという面もあります。
まずは、専門の医療機関、そして地域包括支援センターや精神保健福祉センターへの相談からはじめてみてはいかがでしょうか。
高齢者のこころの病と認知症に関する専門医の検索(日本老年精神医学会)
こころと認知症を診断できる病院&施設(日本老年精神医学会)
いきる・ささえる相談窓口【全国】(自殺予防総合対策センター)
全国精神保健福祉センター一覧(自殺予防総合対策センター)
なお、現在のうつ病治療においては、抗不安薬・抗うつ薬による投薬療法が大きな位置を占めていますが、高齢者は一般に持病や身体的不調を抱え複数の薬を常用していることが多いため、他の薬との飲み合わせや、副作用の問題が出てくることがあります。
身体的異変が出た場合には服用を中止し、しばらく様子をみる必要がありますが、うつ病の治療もまた薬の中断による影響を受けるため、それぞれの専門医に連絡し、今後の対応を相談するようにしましょう。
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