在宅介護でも活かしたい「声かけ」~会話こそが人生
介護における「声かけ」は、他人を相手にした単なる技術でもなければ、介護施設で働く人だけのものでもありません。
たとえ話しかける相手が気心の知れた家族でも、「声かけ」の基本をいくつか押さえておくことは、在宅介護をスムーズなものにしてくれます。
何でもわかっているつもりの家族だからといって、話をぞんざいに聞き流したり、話の内容を強く否定してよいわけではありません。家族であっても別の人格をもった一個人であることを、忘れないことです。
そもそも自立して生活を行えない、自分の介護で家族に負担をかけている…という自責の念から、すでに本人の気持ちが萎縮していることも多いものです。
声のかけ方ひとつで、本人が持つマイナスの感情を和らげることもできれば、逆に増幅させてしまう可能性もあります。
すでに外出もままならない状態なら、日々に交わす会話こそが本人にとって今を生きること、すなわち人生そのものです。
したがって「会話を充実させる」ことは、本人がよく生きることにつながると言ってもよいでしょう。会話のきっかけとなる「声かけ」が上手なら、その後に続くおしゃべりも、うまく流れにのせることができます。
それは、本人の気持ちを楽しませてくれます。あるいは慰めや心の平安がもたらされ、明日の一日を頑張って生きようとする気持ちにもつながるでしょう。
滞在時間が限られている介護ヘルパーとは異なり、家族なら長い時間、話を聴いてあげることができます。声かけの大切さを、日頃から意識しておきたいものですね。
以下に、一般に声かけで大切とされるポイントを挙げておきます。
●声かけは、「ゆっくり」「はっきり」した声で行うこと。早口で、一度にたくさんの情報を伝えては、本人の理解が追いつかず混乱します。家族ですから、このことを頭の片隅に置きながら自然にふるまえばよいでしょう。
●さわる前・動作の時には、目をみながら声をかける。これはあらかじめ本人に心理的な準備をしてもらう、「予告」の役割を果たします。
●目線は、本人となるべくそろえる。本人が難聴気味の場合は、本人がもっとも聞きやすい位置に座るなどの配慮を。
●笑いの見いだせる会話を心がける。また時には手をとったり、腕や背中に触れながら話すのもよい。
●声かけから会話に入った後は、本人の話をよく聴く(傾聴)こと。相手のペースにあわせるのが基本。
説得を控え、共感する気持ちを抱きながら、言葉を交換します。会話の時間を共にする感覚や空気感を楽しむ心持ちになれれば、上級者です。
●変化に乏しい在宅介護の生活では同じ話、以前に聞いた話の繰り返しになるのが、むしろ普通。「同じ話題から、新しい楽しみ方を引き出す」つもりで、何度でも繰り返し聴きましょう。
●「否定的な言葉を使わない」のが基本だが、これは相手の言いなりになることを意味しない。相手が「それもそうだな」と、気分を害さずに考えを変えてくれるよう導くこと。
「~しましょう」といった同じ方向を向いていっしょに行うニュアンスと、「~はどう?」といった相手に選択権を持たせる言い回しは、効果的に使い分けたいもの。
●弱音をはいたり愚痴をこぼしたりした場合は、本人に寄り添う気持ちが大切。無理に励ましたりせず、相づちをうちながら黙って聴いてるだけのほうがよいこともあります。
●本人の「不安感」や「羞恥心」にも配慮する。時と場合によって、あるいは本人の感情のたかぶりを考えて、「本当のことを伝えない」「話をかえる」「ストレートに反応しない」ことも必要です。
高齢者介護とコミュニケーション~「聞く技術」を磨こう
本人が認知症で、症状が進みつつあるケースでも基本は同じですが、個々の症状の現れ方と程度において、より細やかな気配りも必要になってきます。
近年、主に認知症の患者に向けた「ユマニチュード」というフランス発のケア手法が、注目されています。
「ユマニチュード」は「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つを基本として、「あなたが大切な存在である」というメッセージを理解してもらえるように接することで、気持ちのよい時間を過ごせるようにするコミュニケーション技術です。認知症の方を在宅で介護されている方は、身につけておくべき方法論のひとつでしょう。
ユマニチュード(Wikipedia)
「在宅介護における声かけ」については、女優・介護福祉士の北原佐和子氏の以下の本が参考になるので、ご紹介しておきます。
女優が実践した介護が変わる魔法の声かけ(北原佐和子 著、飛鳥新社)
次の記事は「高齢者のうつ病~家族の対応と気づき・治療の注意点」です。
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