在宅医療と在宅介護の関係~現状と問題点


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在宅介護においては、高齢者が何らかの病気の治療を受けながら、同時に家族の介護を受けているのが普通のはずです。

そして、本人の状態や体調が悪化したときはあわてて病院へ連れていく…ということになりがちですが、医師に自宅に診察にきてもらう「在宅医療」については、どれくらいご存知でしょうか。


国が「在宅医療の推進」に力をいれているにもかかわらず、在宅介護に追われる家族の多くはその中身をよく知らないというのが、どうも現状のようです。


「在宅医療」とは、通院が困難な患者の自宅に医師が訪問して、医療サービスを提供するものです。

在宅医療は、医師が計画的に訪問して医療を行う「訪問診療」と、臨時に医療サービスを提供する「往診」の二種類があります。


一般的には、動けない患者の状態が悪化したときだけ急いでお医者さんを自宅に呼ぶようなイメージが強いですが、これは「往診」で、「訪問診療」と区別されています(医療保険の診療報酬点数が違ってきます)。

これからの在宅医療については、あらかじめ「月4回、毎週×曜日」のように往診する日を決めて行う「訪問診療のシステムそのもの」と、「そこで提供される医療の質」を中心に、考えていく必要があります。


もちろん、緊急の手術や集中的な治療が必要なレベルの人の場合、病院での医療が必要かつ優先されることは当然です。


今日の日本では、専門設備の整った病院で治療することで、はじめて高水準の医療が受けられるようになっていますから、治療レベルの絶対的水準という点では、現在の在宅医療は病院治療にとうてい及ぶものではありません。


しかし在宅医療の目的は、少し別のところにあります。

寝たきりであるが病状が安定しかつ進行がゆるやかで、医療の緊急性よりも介護がベースになっている場合、あるいは本人が入院を望まず「自宅で治療を受けたい」と希望するような場合は、在宅医療のほうが適しているはずです。


入院治療は病気そのものの治療に最適であっても、家族との交流や生活の快適さなど本人の生活の質を損なうような、ある種の犠牲の上に成り立っています。


平成24年の内閣府調査では、「自宅で人生の最期を迎えたい」と希望する人が、全体の54.6%に上りました。

医療的な処置が終わった後の長期間の入院が基本的に難しく、また介護施設への入所も長期間の順番待ちを余儀なくされるいま、「できるものなら、住み慣れた自宅で治療を続けたい」ということへの潜在的ニーズは、相当あるようです。


このような本人の希望と意思を尊重するならば、患者側が今よりもっと在宅医療を選びやすい状況を社会的に整えていくことが、必要なはずです。


また国も、在宅医療の拡充に力を入れています。

上で述べたような背景もありますが、病院入院の長期化による医療費の増大・財政の圧迫という点から見れば、在宅医療の場合は病院の入院基本料や差額ベッド代などもかからないため、医療費が大幅に少なくて済むからです(もちろん患者側にとっても、入院治療に比べて、一般的に自己負担額もぐっと少なくなります)。


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しかし国の思惑にもかかわらず、あるいは在宅医療を推進する専門家や医師らの努力にもかかわらず、現在の在宅医療の普及状況ははかばかしくありません。

在宅医療を行う届出をしている医療機関も、全国で1万ヶ所程度にすぎません。


理由はいくつかありますが、在宅医療は患者の容態の急変などに迅速に対応するため、医療機関側で基本的に24時間対応する体制を敷く必要があることが、普及をはばむ大きな要因のひとつになっています。

医師が夜間の電話で患者の相談に応じたり、あるいは自宅にかけつけて、必要とあらば緊急入院する病院の紹介や手配まで行う必要があるわけです。


在宅医療を提供する側としても、複数の医師や看護師がチームで組織的に動く体制がどうしても必要になるため、地域で一人でやっている開業医に年中無休で即時の往診を期待するのは、テレビドラマの世界ならあり得ても、現実にはとても難しいことなのです。

この「365日24時間体制に対応できるキャパシティをもった医師・医療機関が全国的に不足している」ことが、在宅医療がなかなか進まない大きな要因のひとつとなっています。


また「一般に入院するよりは費用がかからない」と上で述べましたが、これを医療機関の側から見た場合は、あちこちの患者の家を移動する時間を費やしていては効率も悪く、また診療報酬の点数がさほど高くない在宅介護だけで経営を成り立たせるのが難しいという問題になってきます。


さらに、上で述べた医療機関の体制の問題以外に、患者をみる家族の心理的な問題も、見逃せないものがあります。


いくら「本人の望むように、自宅で最期を迎えさせてあげたい」と家族が思ったにせよ、本人の容態が急に悪くなり、救急車を呼んだあげくの入退院…といったことを何度も繰り返していると、家族もどうしても疲れてきます。

よって、病院や専門スタッフのいる施設にそのままずっといてほしい…というように気持ちが傾きがちになるのも、無理からぬことなのです。


家族の介護負担がそれほど強くないか、あるいは病状的に末期で痛みの緩和ケアだけを行っている状況の患者を除いては、家にいたいという患者本人の希望よりも、専門的な治療と安定した経過観察を望む家族のニーズが、まだまだ勝っているということです。

現実に、自宅で最期を迎えることを望む人の多さにもかかわらず、8割以上の患者が病院や介護施設で看取られている状況にあります。


家族の在宅医療を考える方は、以下の「全国在宅療養支援診療所連絡会のサイト(Home Cares Net)」内の「在宅医療について」を、まずはご覧ください。

在宅医療について(Home Cares Net 全国在宅療養支援診療所連絡会)


全国の在宅医療医の一覧リストは、以下のサイトに掲載されています。

会員リスト(Home Cares Net 全国在宅療養支援診療所連絡会)
在宅医リスト(日本ホスピス・在宅ケア研究会)


最後に、在宅医療を考えるにあたっては(在宅介護と同じ問題になりますが)、「介護する家族の側の負担をどう減らすか」ということも大事なポイントになることを、おぼえておきましょう。

在宅介護 現状の問題解決には、家族の覚悟・ゆとり・工夫が必須


本人の治療にかかわる医療機関や医師を探すことに気を取られがちですが、ショートステイのサービスが利用可能な介護施設が近くにある環境かどうかなど、「介護する自分たち家族が、時おりの休息時間を持つための周辺環境」についても、あわせて調べておきましょう。


(なお在宅医療の詳細については、関連サイト「在宅医療とは~よく生き、よく看取るために」も、あわせてご覧下さい。)


次の記事は「高齢者の誤嚥性肺炎と、介護食における心遣い」です。

ひとつ前の記事は「家族の在宅介護上の負担と、その減らし方」です。


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