広がる「認知症カフェ」~内容と利用法・現状と問題点


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認知症の家族にかかる在宅介護においては、本人・家族とも不安を内に抱え込み続けることからストレスがたまり、ともすれば自宅に閉じこもりがちになります。

結果として、あたかも自分たちが社会から隔絶されたような心理状態に陥りがちです。

認知症患者の在宅介護において、家族が理解すべきこと でも述べたように、とりわけ介護する家族が心身とも張りつめた状況に置かれるため、機会をみて自らの休息時間を作る必要があります。


本人・家族が社会とのつながりを確認し一時の気分転換をはかるスペースとして、近年全国で広がりをみせる「認知症カフェ」が近隣で開催されているかどうかを、地域包括支援センター等で尋ねてみるとよいでしょう。


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認知症カフェは、認知症の人や家族が、地域の住民や専門家と互いに情報を共有しお互いを理解し合うための場所です。

認知症カフェを訪れる際は、本人の要介護認定などは関係なく、誰でも参加できます。また認知症カフェは、そこで出会った家族がお互いの連絡先を交換し、横のつながりを持つ場としての役割も果たします。


認知症カフェの持つ「認知症の人や、その家族だけが寄り集う場所ではない」という基本的な特性は、非常に大切です。

なぜなら、自分たちと異なった生活スタイルを持つさまざまな地域の人たちと、リラックスした環境で交わることが、本人にひととき自身の病気を忘れさせ、社会とつながっていることを実感させてくれるからです。

「認知症の患者」としてでなく、「ひとりの社会人でいられる場所」として機能するのです。


イベントの簡単な手伝いをしてもらうなど、本人に社会的な役割と責任を実感してもらえるように、工夫をこらしているカフェもあります。

皆がそれぞれの状況で弱みを抱えていること、そして工夫しながら日々それに向き合っているのを目の当たりにして、元気を取り戻すような効果もあるでしょう。


認知症カフェの営業は不定期が多く、多くても週1回、大半が月1~2回といったところです。営業日のだいぶ前に、市町村の広報誌などで告知しておくスタイルが多いようです。

営業時間は1回2~5時間(夕刻前には閉店)、利用料金はお茶・お菓子付きで100円~500円前後に設定している施設が多いようです。

茶菓子の提供以外に、簡単な料理教室やゲームなどのイベントを取り入れたり、あるいは外部から招いた専門家による相談会・勉強会を開くカフェもあります。これらのスポット的に行われるイベントでは、別途実費がかかるケースもあるので、あらかじめ主催者に確認しておくとよいでしょう。


認知症カフェは、2012年に策定した「オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)」で国(厚生労働省)がはじめて言及し、その後「新オレンジプラン」へと引き継がれています。

2014年の調査では41都道府県(280市町村)で655の認知症カフェが運営されており、現状さらに増加傾向にあります。


当初は社会福祉法人やNPO法人の設立が多かったものの、現在は市町村(全体の10.6%)・地域包括支援センター(23.8%)・介護サービス施設・事業所(23.8%)による設置も増えています。

場所はデイサービスセンターや公民館・集会所の1階であったり、あるいは民家・個人宅を利用して開催されますが、カフェという性格を踏まえ、どこも気軽で訪れやすい雰囲気づくりに力を入れているようです。

【PDF】認知症カフェ実施状況(厚生労働省)


カフェスタッフはボランティアが中心となり、中には認知症サポーターの資格を持つ方なども含まれます。専門の介護職・地域の民生委員や認知症家族会の方が顔を出すことも、多くあります。


国としては、認知症カフェに出入りする地域のボランティアや、認知症地域支援推進員らと顔なじみになってもらった後に、家族の相談にのりながら、家族が認知症に関わる基本知識や介護技術を得られるよう、地域で発展的なサポートをしてもらうことを狙っているようです。

【PDF】認知症カフェ等を活用したボランティアによる居宅訪問や家族向け介護教室等の推進(厚生労働省)


認知症カフェのさらなる普及にあたっては、解決すべき問題点が山積みの状況です。

運営日数・時間が絶対的に短いため、営業施設として採算に乗せるのが難しい点が、もっとも頭の痛いところでしょう。


経営状況は、月1回ですら赤字というところが少なくないはずです。

定期的な開催に向けたマンパワー・設備をどうするかも、運営サイドが苦労するところです。

認知症のお客さまが中心となるため、接客するボランティアスタッフの専門性に関わる能力の向上や、彼らの研修体制の確立も不可欠です。


たとえば病院の一階に併設されるケースなど、家族として気軽に訪れにくいような場所に設置されたカフェが現状少なくない点も、これからの課題です。

さらには認知症カフェ自体、普及しつつあるもののいまだ知名度に乏しく、継続的なPR(広報)がますます必要な状況です。そのための予算をどう確保するか、といった問題もあるでしょう。


このように解決すべき問題が多々あるものの、全国的な認知症患者数の増加傾向に伴って、認知症カフェは今後さらに増える傾向にあります。

カフェとして使いづらい状況そのものは当面続きそうですが、それでも本人・家族にとって単調に流れがちな在宅療養生活のひと時のオアシスとなることも、また確かでしょう。

在宅介護を続ける家族として、近所の認知症カフェの設置・開催情報には、日頃からアンテナをはっておきたいものです。


次の記事は「高齢者介護とコミュニケーション~「聞く技術」を磨こう」です。

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